彼女たちの夜は、まだ始まったばかり。新感覚ガールミーツガール「アフターアワーズ」感想
今回ご紹介するのは、西尾雄太さんの「アフターアワーズ」!「クラブ」を舞台に繰り広げられる、おしゃれで浮遊感のある新感覚ガールミーツガール作品です。
「クラブの楽しみって、それだけじゃないよ」
ケイちゃんといると、新しいセカイが開けてく−−
あらすじ
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気乗りしないままやって来た渋谷のクラブで、不思議なおねえさん・ケイと出会ったエミ。ミラーボールの下でしゃべって、飲んで。気づけばケイのベッドで一緒に寝ていて…って、あれっ??しかも「VJをやってもらいます」なんて。待って待って!VJって何!?
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おすすめポイント1 こんなおしゃれな百合、見たことない!
クラブという舞台、かわいいというよりかっこいいに近い黒髪ショートのお姉さん「ケイ」というキャラクター、センスの光るインテリアやファッションなどなど、これまでにあまり見たことのないおしゃれ百合。いわゆる「萌え」を突き放したようなかわいい絵柄がとても新鮮に感じられます。
おすすめポイント2 描かれてるのは「恋愛」だけじゃない!エミのやりたいことは見つかるのか
主人公のエミは、「やりたいこと」を探してる女の子。彼女は自分が何が好きなのか、何をやりたいと思っているのか、まだよくわかっていません。そんなエミは、自分のしたいことをして生計を立てているケイという人物との出会いによって、少しずつ変わっていきます。第1巻の後半に見つけた、エミの「やりたいこと」は、一体これからどんな景色につながっていくのでしょう。一人の読者として、これから二人の夢を見つめていけたらいいなと思います。
おすすめポイント3 百合の定型から思いっきり外れてます!マンネリを感じてる人におすすめ
「百合」というワードを聞いてみなさんは何を想像するでしょうか。
これまでの百合作品はいわゆる「定型」的なものが存在しており、表現や描写に暗黙の縛りがあったように思います。もっともっと多様な舞台、キャラクター設定が増えて「百合」というジャンルが盛り上がってほしかったわたしは、それを歯がゆく思わずにはいられませんでした。
しかし!この「アフターアワーズ」という新しい百合作品は、わたしの期待を遥かに上回ってくれたのでした。
物語の主人公、エミはフリーターの女の子。エミが出会ったショートカットのお姉さん、ケイの職業はDJ。二人がベッドインするのは出会った初日で、しかもエミは同棲中の彼氏がいます。社会人の二人は年の差がそれなりにあって、性格も好みもぜんぜん違うキャラクターです。しかし話の展開はドロドロした方向に進むのではなく、どこか夢心地でふわふわした雰囲気の中、少しずつ変化していくエミとケイの関係性が描かれています。
キャラクター設定、世界観、物語の展開ともに、見事にこれまでの「百合」の定型から外れており、これまで出てきていなかった、ジャンルの枠組みをも広げる作品ではないかと思います。
「百合」というジャンルにマンネリを感じている方、またそれほど馴染みのない方にも、ぜひ読んでもらいたい作品です!