【良質百合】何度も読み返したくなる中毒性「終電にはかえします」感想
今回ご紹介するのは、百合に興味があるけれど、何を読めばいいかわからない…という人に自信を持っておすすめしたい一冊!「甘々と稲妻」で知られる雨隠(あまがくれ)ギドさんの初ガールズラブ作品です。
6作品が収録された短編集で、片思いの三角関係、幼馴染の幽霊、姉の友人を好きになった妹など、女の子同士のいろいろな関係性が描かれています。
ひらがな線、あいう駅より
あらすじ
お嬢様系の美少女あさぎは、通学電車の中で後輩のツネと知り合う。クラスで浮いている様子のツネが自分にだけなついているのは気分がいい。それだけのはずだったのに、初めてツネの姿を目にしたあさぎは……?
サッカー選手と結婚して玉の輿を狙う「あさぎ」は、かわいい見た目に反して中身は黒く、計算高いところがある女の子。あさぎの後輩の「ツネ」は金髪マスク姿で、制服のスカートの下にジャージを合わせるというヤンキーのような容貌をしているけど、人懐っこくてかわいらしい一面を持つ女の子です。
私のお気に入りシーンはこちら。
ツネが初めてマスクをはずしたところを目にするあさぎ。
(「終電にはかえします」15p)
そしてこの反応です。笑
(「終電にはかえします」p16)
このあと思わず涙してしまうあさぎの信じられないかわいさときたら…。あさぎのこともツネのことも愛おしくて仕方なくなります。早く付き合ってください。
終電にはかえします
仲良くなったあさぎとツネ、かわいいふたりの休日デートが描かれます。すらっとして背の高いツネのミニスカート姿が貴重!フードコートでごはんを食べたり、あさぎの卒業祝いにネックレスを買ってあげたりする二人は、まるで恋人同士のようです。しかし、もうすぐあさぎは大学生。春になったらふたりは離れ離れになってしまうのです…。
些細な言葉がきっかけで気まずくなってしまうふたり。焦ったあさぎは思い余って、「私がツネのことすっごい好きなのちゃんとわかっててよー!!」とツネに告白してしまいます。
(「終電にはかえします」p44)
あさぎの言葉にぼろぼろ泣いてしまったツネ。改めて互いの気持ちを確かめ合うことのできたふたりは…?
「ツネと二人 行き先のみえない電車にのりました
少しこわいけど きっと楽しいデートになるはずです」
最後に差し込まれるこのモノローグが特にお気に入りです。同性同士の関係は大変なこともあるかもしれないけれど、ふたりならきっと大丈夫。希望のもてる未来が待っていることを予感させる爽やかなラストです。
少女プラネタリウム
学校では大人しくて無表情なクラスメイト、サトウさん。彼女の笑顔を、偶然道端で目にしてしまうスズキさん。プラネタリウムのきれいな星空を見上げるサトウさんのきれいな横顔を見たスズキさんは、もっと彼女のことを知りたいと思いました。ちょっとずつ近づいたり離れたりする二人のもどかしい距離感がたまりません。
一瞬のアステリズム
(「終電にはかえします」p95)
蝶子、はなちゃん、蜜美。三人の女子高生の、一方通行の三角関係が描かれます。ちょっと変わっているけれどこういう選択もありかな、と思える不思議なラストが印象的。
永遠の少女
(「終電にはかえします」p116)
みさおが子どもの頃からそばにいた黒髪の女の子、みずき。彼女の正体は病気で亡くなった幽霊の少女でした。時が経つにつれてどんどん成長していくみさおに反し、みずきの時間は止まったままです。みさおのウェディングドレスを目にしたみずきは…。あまりに意外なエンディングが心に残ります。
大人の階段の下
癖っ毛に悩むナツ。お姉ちゃんが家に連れてきた美少女、久我さんの黒髪に憧れて、彼女が使っているものと同じ椿オイルを手にいれます。お姉ちゃんはいつもナツに好きなものを譲ってくれるけれど…?ちょっと切なくて胸がきゅんとするお話です。
少女星図
「少女プラネタリウム」のスピンオフ。タイトルとの関連性がかわいらしいです。
最後に
人を好きになること、大切に思うことの楽しさと苦しさが描かれています。何度も本棚から抜き差ししている一冊ですが、読み返すたびに「恋する女の子って本当にかわいいなあ…」と胸をきゅんきゅんさせられます。頬を染めてそっぽを向く女の子、失恋して泣きじゃぐる女の子、大切なものに手を伸ばす女の子。女の子のいろんな気持ちがぎゅっと凝縮されたすてきな作品です。
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