日々の泡

読んだマンガの感想をひたすら綴るブログ。

男子校の中のちょっぴり「女子」な男の子。日常BL!?「トコナツ」感想

女の子っぽい男の子、男の子っぽい女の子が好きです。中性的な風貌には、視線を引き寄せられる不思議な魅力があるような気がします。

 

今回ご紹介するのは、月子「トコナツ」
作者の月子さんの代表作は「彼女とカメラと彼女の季節」。こちらは女子高生×女子高生×男子高校生の流動的な三角関係を描いた作品で、すでに完結しています。合わせてお読みになってはいかがでしょう。

 

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 「トコナツ」あらすじ

 

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「宮沢が一番可愛いんだって」男子高校生・増田は同じクラスの宮沢と仲良し。いつも皆でバカやって楽しく過ごしているけれど、時々妙に宮沢のことが色っぽく見えてしまって…。
とびきり熱い夏到来!「可愛い」クラスメイトに惑う、男子校ライフ!!

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本作の第1話は読み切りとして掲載されたそうです。そのコンセプトは「男子校に紛れ込んでいる、しかも隠れている女性性を持った男の子」を描くこと。
作品中の登場人物、宮沢は「女の子っぽい男の子」として描かれています。

 

メインキャラクターは宮沢夏央と宮沢に振り回されるちょっとおバカな男子高校生、増田のふたり。(クレープを片手に、鼻にクリームつけてにっこりする宮沢。増田はそのクリームを指で舐めとる。)(カラオケボックスで増田の膝に頭をのっけて寝てしまう宮沢。なんだか悪い気はしなかったと言う増田。)など、数々のいちゃいちゃエピソードを作品中に残しています。

宮沢が増田を振り回していると思いきや、増田が宮沢を煽っているように見える箇所も少なくなく、パワーバランスが一定でない振り子のように揺れ動くふたりの関係性に萌えます。


本作は日常系ラブコメを男×男に置き換えたような作品です。しかし、はっきりした恋愛感情は描かれていないため、BL?ただの友情?あれ、やっぱりBL?どっち?と、増田と宮沢の近すぎる距離感に戸惑います。しかし!少々の物足りなさを覚えているところにいきなり大きいミサイルが打ち込まれるので注意が必要です
あとがきにもあったように、終わりから二編は他のものと比べて暴走気味。ライトで明るい日常生活が描かれてきていた中、宮沢が増田にとった行動にはびっくりすること請け合いです。

 

最後に


かわいい男の子たちがいちゃいちゃしているところを楽しみたい方、女装男子が何より好きだという方におすすめです。
また、BL要素はあるけれども「BL」には至らないもどかしさ、物足りなさを感じたいというMっ気のある人は読まれてみてはいかがでしょうか。
 

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美味しいものを一緒に食べられるなら、わたしたちはいつだって無敵。葉鳥ビスコ「プティトゥ・ペッシュ!」感想

今回紹介するのは、女子と女子の美味しいごはんマンガ、葉鳥ビスコ「プティトゥ・ペッシュ!」です。

 

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葉鳥ビスコは「桜蘭高校ホスト部」で知られている作家さん。

本作は「AneLaLa」連載 、2015年9月に単行本が発売されました。

 

要領の悪い理屈系編集者、依子はオフィス街の路地裏に定員10名の小さなカフェ「ペッシュ」を見つけます。メニューは一点、日替りのおまかせプレートだけ。注文して出てきたのは、おしゃれでおいしそうで健康的なごはんでした。「トマトと手羽先のエスニック風ラーメン」「しょうが焼アレンジみぞれ鍋」など、食欲をそそるものばかり。


依子は自分の心を読んだかのような料理を出してくれる「ペッシュ」の店主、桃が気になって仕方がありません。気づけば毎日のように、ペッシュに通うようになります。

「ペッシュ」の店主の名前は桃。きれいな容貌に反して、料理の他には何もできないマイペースな女性です。実は同い年だと分かった依子と桃は、おいしい料理を通して少しずつ仲を深めていくのでした。

 

ぜんぜん違う環境で、それぞれ異なる時間を過ごしてきたふたり。だからこそ、ふとしたきっかけで出会い、一緒にごはんを食べる時間を、奇跡みたいに大切なものとして感じることができるのかもしれません。  

 

「ペッシュ」はフランス語で桃の意味があります。花言葉は「チャーミング」、「あなたのとりこ」。そして可愛らしいワードの中で異彩を放つ「天下無敵」です。

「自分にとって大事な時間にあなたととびきり楽しいそんな奇跡」という依子。
「友達っていいね 自分でも知らなかった自分を教えてくれる相手なんだね」という桃。
ふたりは「最高においしいものを最高の友達と食べられればいつだって無敵な自分になれる。」のでした。


毎日の忙しさに追われると、食べることをおろそかにしてしまいがち。身も心も疲れているというあなた。気のおけない女友だちと一緒にごはんを食べるしあわせで、おなかいっぱい満たされてみませんか。  

 

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彼女たちの夜は、まだ始まったばかり。新感覚ガールミーツガール「アフターアワーズ」感想

今回ご紹介するのは、西尾雄太さんの「アフターアワーズ」!「クラブ」を舞台に繰り広げられる、おしゃれで浮遊感のある新感覚ガールミーツガール作品です。

 

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「クラブの楽しみって、それだけじゃないよ」

ケイちゃんといると、新しいセカイが開けてく−−

 

あらすじ

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気乗りしないままやって来た渋谷のクラブで、不思議なおねえさん・ケイと出会ったエミ。ミラーボールの下でしゃべって、飲んで。気づけばケイのベッドで一緒に寝ていて…って、あれっ??しかも「VJをやってもらいます」なんて。待って待って!VJって何!?

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おすすめポイント1 こんなおしゃれな百合、見たことない!

 

クラブという舞台、かわいいというよりかっこいいに近い黒髪ショートのお姉さん「ケイ」というキャラクター、センスの光るインテリアやファッションなどなど、これまでにあまり見たことのないおしゃれ百合。いわゆる「萌え」を突き放したようなかわいい絵柄がとても新鮮に感じられます。

 

おすすめポイント2 描かれてるのは「恋愛」だけじゃない!エミのやりたいことは見つかるのか

 

主人公のエミは、「やりたいこと」を探してる女の子。彼女は自分が何が好きなのか、何をやりたいと思っているのか、まだよくわかっていません。そんなエミは、自分のしたいことをして生計を立てているケイという人物との出会いによって、少しずつ変わっていきます。第1巻の後半に見つけた、エミの「やりたいこと」は、一体これからどんな景色につながっていくのでしょう。一人の読者として、これから二人の夢を見つめていけたらいいなと思います。

 

おすすめポイント3 百合の定型から思いっきり外れてます!マンネリを感じてる人におすすめ

 

「百合」というワードを聞いてみなさんは何を想像するでしょうか。

これまでの百合作品はいわゆる「定型」的なものが存在しており、表現や描写に暗黙の縛りがあったように思います。もっともっと多様な舞台、キャラクター設定が増えて「百合」というジャンルが盛り上がってほしかったわたしは、それを歯がゆく思わずにはいられませんでした。

 

しかし!この「アフターアワーズ」という新しい百合作品は、わたしの期待を遥かに上回ってくれたのでした。

物語の主人公、エミはフリーターの女の子。エミが出会ったショートカットのお姉さん、ケイの職業はDJ。二人がベッドインするのは出会った初日で、しかもエミは同棲中の彼氏がいます。社会人の二人は年の差がそれなりにあって、性格も好みもぜんぜん違うキャラクターです。しかし話の展開はドロドロした方向に進むのではなく、どこか夢心地でふわふわした雰囲気の中、少しずつ変化していくエミとケイの関係性が描かれています。

キャラクター設定、世界観、物語の展開ともに、見事にこれまでの「百合」の定型から外れており、これまで出てきていなかった、ジャンルの枠組みをも広げる作品ではないかと思います。

 

「百合」というジャンルにマンネリを感じている方、またそれほど馴染みのない方にも、ぜひ読んでもらいたい作品です!

 

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ポップな絵柄にのせた絶望 福島鉄平短編集『アマリリス』感想

 こんばんは!今夜ご紹介するのは福島鉄平さんの『アマリリスです。

 

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表題作の作品は衝撃的なテーマ、内容で話題になっていたそうです。あとがきにもありましたが、確かに少年ジャンプには載せられないテーマだなあと思いました…。どちらかといえば青年誌寄りな気がします。

 

この短編集、少年愛、BL、百合、女装、ショタなど、タブー視されがちな、いわゆる変化球の作品が多く掲載されているのですが、胸にぐさりと刺さる痛いお話もあれば、心にじわりと染み入るあたたかいお話もあり、「すごいもの見たなあ…」という充実した読後感がありました。

短編集は作者さんの持っている引き出しをたくさん見られるというお得感があるのでよく読むのですが、間違いなくこの『アマリリス』という短編集、「傑作」と呼べる類のものではないかと思います。

ではこれから、いくつかの作品の簡単なあらすじ説明&感想に入っていきたいと思います!

 

マリリス

親に捨てられ、借金返済のために「へんたいのおじさん」に売られた少年、ジャン。女装しておとなのお店で働く中、街で同い年の少年、ポールと出会います。二人はある児童小説をきっかけに仲を深めていき、ジャンはポールと過ごす時間を大切に思うようになります。しかし、ポールの純粋さを目の当たりにする中、自分のやっている仕事が際立って「きたなく」思えて、ポールと一緒にいる自分を後ろめたく感じるようになったジャンは…。

 

短編集の中では一番好きな作品です。

少年二人の友情?愛情?の話。子どもから大人への通過儀礼、セクシャルな事物についての戸惑いや嫌悪感について、繊細な心情表現で描かれています。

 

親に捨てられる前まで自分が存在していた、学校や部活動のある「社会」からジャンが一人隔絶されていく過程がセリフ、コマ割りによってとても丁寧に描かれており、ジャンの戸惑いや不安、絶望の感情が良く伝わってきました。(日本と西洋の融合が散見される不思議な世界観が描かれており、キャラクターとの距離が近く感じられたことも印象的でした。)

モノローグも非常に印象的です。ラストページでは、純粋なものに触れることをあきらめたジャンの後ろ姿が切なさを煽ります。自分ではどうにもできない問題によって未成年が苦しめられる構図、というのはいろいろ考えさせられるものがあるなあと思いました。

 

イーサン飯店の兄弟は今日も仲良し

心があたたまる&胸がスカッとする兄弟愛のはなし。決めるときは決めるお兄ちゃん、かっこいいです。

ハルよ来い

山の神様に育てられた少年が主人公。一味違う親子愛、すれ違ってから分かり合うまでを描いています。

ルチア・オンゾーネ、待つ

わがままで自己中心的、だけど本当はさみしがりやな12歳の少女、ルチアは孤児院で父の迎えを待っています。いつも部屋の隅にいた不思議な黒髪の少女、ベッラとふとしたきっかけで距離を縮めるルチア。初めてできた「友達」と呼べる存在がうれしくて、プライドの高いルチアも笑顔を隠せません。しかし、ベッラの本当の正体は…。

 

百合要素、ありです!!!(高まる)友情と愛情の間を揺れ動くガールミーツガール。ミステリアスなベッラに振り回される、プライドの高いルチアのかわいさがたまりません。ルチアとベッラの絆の深さを感じさせる、余韻の残るラストシーンも素敵です。見栄っ張りな女の子は本当にかわいいですね。(まとめ)

 

私と小百合

体育会系男子を苦手に思っていた女装少年が、いつのまにか一生懸命彼をたぶらかしてしまうお話。かわいいです。もっと尺をつかって描いてほしい。

マリリス【epilogue】

マリリスの続編。数ページながら、つい涙してしまいました。内容は是非ご自身でお確かめください。

 

最後に

福島鉄平さん、これからも追いかけていきたい作家さんの一人になりました。

『スイミング』という水色の表紙のもう一つの短編集の方は、「恋」をテーマとした、かわいくて明るくて、爽やかな読後感の作品がたくさん詰め込まれています。こちらも合わせて、秋の夜長にお読みになってはいかがでしょうか?

 

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なんだかいいもの読んだかも? 阿弥陀しずく『からっぽダンス』感想

 こんばんはー。最近また寒くなってきて、治りかけの風邪がぶり返しそうで怖いなあと思っています。

今夜はフィールヤングに連載&単行本は2巻まで発売中、阿弥陀しずくさんの『からっぽダンス』をご紹介。作者さんの前作のテンポのよさが好きだったこと、わたし自身がある男性アイドルのファンだということもあり、大変面白く読ませていただきました!

 

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ストーリー

惚れる→追いかけ回す→フラれるの3連コンボを繰り返すストーカー警官・久我が出会ったのは、片想いに破れたばかりの美人OL・月島さん。何とかデートにこぎつけたはいいものの、行き先は男性アイドルのコンサートで…!?

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手錠を回してかっこつけている警官、久我さんが本作品の主人公。「ストーカー警官」と帯に書かれてあるだけあって、ラーメン屋さんで一目惚れしたOL女性の月島さんを、ストーカーのように追い回してしまいます。(警官なのに…)

 

ヒロインはドルオタ!?

主人公は相手を好きになったら一直線のストーカー警官。それだけではなく、本作品のヒロインもまら一筋縄ではいかないキャラクターなんです。

そう、彼女はとあるアイドルグループの一人、美しさでヒロインを食う「尚也」に夢中!

久我さんが好きになった美人OL月島さんは実は10年来のドルオタだった!?というはちゃめちゃ展開に発展していくことになります。

 

作品の見どころ

 本作品を読んで、特に印象に残ったのは、久我さんと月島さんの関係性です。久我さんは月島さんの領域に踏み込むことはあっても、傷つけたり壊したりなんなりということがないのです。

 

アニメ、マンガ、ゲーム、アイドル、なんでもいいです、何かにはまっている人たちのことを「オタク」と呼ぶことがありますが、かつて一斉を風靡した「電車男」のように、「オタク」趣味を捨てなければ女性とはお付き合いできない、という価値観は、既に風化しつつあるものなのかもしれないなあ、と本作品を読んで思いました。

 

大好きな月島さんのことをもっと知りたくて、近づきたくて、彼女の大好きなものを理解しようと努める。アイドルのライブにも行くし、ファンクラブまで入っちゃう。尚也に夢中な月島さんを見て嫉妬しちゃうこともあるけれど、でも、彼女の好きなものを、大事なものを、決して手放せなんて言わない。

 

干渉しないどころか、一緒になって楽しもうとするという久我さんの態度は、今の社会だと少し珍しいのかもしれないけれど、もしそんな風に、好きなものを好きな人と一緒に共有することができるのであれば、それはきっと幸せなことなんだろうなと。二人の関係性がかわいくて、微笑ましくて、少しうらやましくもありました。

 

最後に

『からっぽダンス』、心あたたまるストーリーで、今後が楽しみな作品です。

 

・アイドルが好きな方(熱中している趣味がある方)

・テンポのいいギャグが好きな方

・対等に近い関係性を求めている方

はなにか感じるところがあるんじゃないかなあと思います。

 

阿弥陀しずくさんの前作、『こんなはずでは』という心あたたまるほのぼのBL作品も非常におすすめですので、興味がおありな方はぜひぜひ、合わせてお読みになってはいかがでしょうか。それでは、いずれまた。

 

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志村貴子『起きて最初にすることは』感想

深夜に思い立って本棚から取り出しがち、何度も読み返してはため息をついてしまう、大好きなこの一冊をご紹介!

志村貴子さんの『起きて最初にすることは』

 

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百合というジャンルが大好きなわたしにとって、アウトサイダーながらも「百合」の代表格を担う『青い花』という愛してやまない大切な作品があるのですが、志村貴子さんはその作者さんでありまして、発売初日に作家買いしてしまうほどに大好きな作家さんなのです。

 
不憫なBL

親の再婚で突然出来た弟は 生意気で 素っ気なくて やりチンで… 

でも可愛い。

欲情が甘く痺れる ダメ恋ボーイズラブ

 

親同士の再婚によって突然できた、2才年下のかわいい弟、夏央に想いを寄せてしまう兄、公崇。 「不憫BL」に連載されたとだけあって、この片恋、ほんとうに不憫なんです…。

 

男とHしてるところを見られてしまう、あるあるなバレ方をしてしまい、懐かれていた夏央に嫌われ、ゲイであることを学校でも言いふらされ、散々な目にあった公崇は不登校→退学→ニートの道へ…。つらい。

 

これだけでも不憫なんですが、夏央がどれだけ女関係にだらしないやりチンでも、面と向かって冷たい言葉を吐かれたとしても、

 

公崇はそれでも夏央のことを、どこまでも一途に(激しく)(粘着質に)(かっこ悪く)想い続けてしまうんですねー。

 

切なさ200%

起きて最初にすることは 君の寝顔を確認すること

起きてるときの君はクソみたいにかわいげがない

かわいげのない君を めちゃくちゃに 犯してしまいたいと思う

だけどやっぱり愛したい

愛したいし愛されたい

やさしくしたいしやさしくされたい

 

このモノローグ、すばらしいです。公崇の夏央に対する、ぐちゃぐちゃにいろんなものが混ざった感情が切なくて悲しくて。そんな切ない恋愛、やめちゃえよー。と言いたくなります。 

 

ですが!この作品、なんと、片恋だけでは終わりません。

公崇のストーカーじみためちゃくちゃな押しにずるずると流されてしまい、あんなことやこんなことも受け入れてしまう夏央。これこそ誘い受けでしょう。

 

公崇の言動を嫌悪しつつ、どこか満更でもないような夏央のかわいい表情に、

これ、いけるんじゃないの??もっと押していけ公崇!

とガッツポーズを決めたのはきっとわたしだけではないはずです…。

 

ついにはノンケであるはずの夏央ですが、過去に公崇に抱いていた憧れに似たけなげな想い(?)までも発覚したりしなかったり…

ラストシーンは今後の二人の新しい関係を匂わせるような余韻を残しながら、ゆるやかに収束していきます。

 

この作品、(というかこの作者さんの作品)決してわかりやすいコマ割りではないし、回想が突然始まったりして、「え?」と一瞬戸惑うこともあるけれど、そのとっつきにくさがあるからこそ、何度読み返してもおもしろいなあと思います。

 

登場人物の感情の機微が繊細なタッチで表現されることによって、ダイレクトに気持ちが伝わってくる、稀有なBL作品ではないでしょうか。

未読の方は、ぜひ、読んでみてください。

 

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「しるされしアイ」感想

 

今夜取り上げるのは、たなと先生の「しるされしアイ」というBLまんがです。

「俺の好きな子、恥ずかしがり屋のヤンキーくん」という帯。これはもう買うしかないと思いました…

 

この作品の良さはやはり、擦れ違いながらも少しずつ親展していく、もどかしくも甘酸っぱい等身大のふたりの恋を描いているところでしょうか。カップリング的には「ツンデレヤンキー」×「うざめの世話焼き」ということですが、設定の枠を超えるような、リアルなキャラクター描写が印象的です。

 

進路の悩みとか、進学してからのさみしさとか、いわゆる「青春」的なエピソードは下手すると陳腐化してしまいそうな感じもしますが、作者さんが登場人物の内面をしっかり描かれているせいか、ありきたりさを全く感じさせず、とても新鮮でした。互いのことをいつも考えて右往左往しているミナミくんと亮くんがかわいくて、応援したくなっちゃいます。

 

それにしても、無愛想ヤンキーキャラのふと見せるかわいさって異常だと思うんですよね。今回の作品でいうと、事後のピロートークで見せてくれる不意打ちの笑顔とか、「おっこっちまえ お前なんか」と頬を染めながらつぶやいてしまう亮くんのかわいらしさときたら!萌えすぎたので、ぱたんと本を閉じてくっしょんバンバンやっちゃいました…作者さんに何度心臓をぎゅうぎゅう掴まれたことかわかりません。

 

暴力描写がだめで、作者さんの前作「スニーキーレッド」が苦手だった方にもおすすめしたいです。

 

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